SESとは
SES(System Engineering Service)とは、システム開発における設計・開発・運用保守を外部委託するにあたって取り交わされる契約形態の一つで、設計書やソフトウェア本体などの成果物ではなく、エンジニアの労働力を提供する契約です。
準委任契約と同じ意味で使われ、派遣契約や請負契約とは異なる契約形態になります。
フリーランスのエンジニアがクライアントの社内に常駐して作業を行う場合に取り交わされたり、SES企業が自社の社員を客先に常駐させてシステム開発を行うこともあります。
僕はSES企業で5年間働いていましたが、その間にたくさんの客先で開発をしました。
ITエンジニアには色んな働き方があり、SESはそのうちのひとつです。ここからはSESが他の働き方とどう違うのかを詳しく解説していきます。
SES以外の契約形態と比較
事業会社が他社にシステム開発を委託する場合、ケースによって様々な契約形態がとられます。
SESと他の形態とで、どのように契約内容が違うのかを解説します。
SES契約と「準委任契約」の違いはない
SES契約はそのまま「準委任契約」と同じ意味になります。
システム開発において取り交わされる準委任契約は、クライアントに対してエンジニアの労働力を提供するというのが特徴です。
予め決められた1カ月あたりの稼働時間を守ることに責任を持つため、システムを完成させる(納品する)責任はありません。
また、基本的にはクライアントの会社内(客先)に常駐して作業を行います。
通常は1カ月から6カ月ほどの期間で契約を取り交わし、契約期間の終了時はその客先での作業を終了するか、契約を延長して作業を継続します。
info
準委任契約ではなく「委任契約」というものも存在します。
委任契約というのは、法律行為を外部に依頼するための契約形態で、弁護士に訴訟の代理を委託する場合や、税務を依頼する場合などに取り交わされます。
システム開発において法律行為は発生しないため、委任契約を結んで開発を行うことはありません。
SES契約と「派遣契約」の違い
「派遣契約」は、客先に常駐して作業するという意味ではSESと同じですが、指揮命令の権限を持つ人が違います。
派遣契約では委託した側(クライアント)の指揮命令によって作業を行いますが、SES契約の場合は委託された側(自社)の上司が指揮命令権を持ちます。
SES契約を取り交わしているにも関わらず、クライアントから直接指示を受けて作業を行ってしまうと、偽装請負といって違法行為となってしまいます。
注意
クライアントやSES企業では暗黙的に偽装請負を行ってしまってる場合があるので注意が必要です!
SES契約と「請負契約」の違い
システム開発における「請負契約」というのは、要件定義から運用保守までの全部、または一部を開発会社に委託する契約形態です。
委任契約では納期までに成果物を納品することに責任を持ちます。
システムを完成させるのが目的のため、開発にあたるエンジニアの人数や工数などは委託された側で自由に決めます。また、報酬は納品した成果物に対して支払われます。
対してSES契約は、あくまでエンジニアの労働力を提供する契約のため、報酬は成果物ではなくエンジニアの労働に対して支払われます。
SES以外の働き方と比較
SESはクライアントと「準委任契約」を結んでシステム開発を行い、契約で定められた時間の労働をクライアントに対して提供します。
エンジニアの働き方はSES以外にも様々ですが、それぞれどういった違いがあるのでしょうか。
SESと「受託開発・SIer」の働き方の違い
SIerはクライアントと「請負契約」を取り交わすことで仕事をします。
多くの場合、要件定義から保守運用までを一括して請け負うため、SIerは上流工程から下流工程まで幅広い技術を持っている必要があります。
また、成果物が完成して納品した後は一定期間、契約不適合責任(瑕疵担保責任)というものを負い、納品物に何か問題があった場合、問題を解決する必要があります。
一方SESは一定期間の労働を提供するので、要件定義のみ、保守のみといった部分的な工程だけを担当することが多くなります。(契約が延長になれば一連の開発作業を全て行うこともあります)
システムが完成するかどうかに関係なく、契約が終了すれば現場を離れることになります。
SESと 「派遣」の働き方の違い
派遣は、文字通りクライアントと「派遣契約」を取り交わして開発を行います。
派遣契約の場合、基本的に派遣元(クライアント)の社員と同じ扱いになり、派遣元の責任者から指示を受けて開発を行います。
SESの場合は派遣元から指示を受けてはいけないので、一緒に客先へ常駐している上長など、自社の責任者から指示を受けて開発を行います。
SESと 「自社開発」の働き方の違い
自社開発の会社は、外部への委託をせず自分の会社内でシステム開発を行います。
そのため自社開発のエンジニアは外部の会社と何かしらの契約を結ぶということはありません。
強いて言うなら、会社と従業員との間で雇用契約を結んだうえで開発を行います。
SESと「社内SE」の働き方の違い
社内SEは、事業会社に所属して開発を行うため、自社開発と近いものがあります。
ただし、社内SEの場合はシステム開発のみを行うのではなく、会社のセキュリティ対策やパソコン周りのトラブル対応など、開発とは関係ない作業も担当することになる可能性があります。
SESの場合は設計や開発を行うことにコミットし、客先のセキュリティやパソコンのトラブルなどは契約の範囲外であることが多いです。
僕はSESから社内SEに転職しました!
SESのメリット
SESの特徴を理解したところで、SESにはどのようなメリットがあるのかを見ていきます。
様々な環境での開発を経験できる
SESの働き方の特徴として、客先に一定の期間、常駐して開発を行います。
そのため、契約期間が終了すると別の客先に移動することになるので、様々な環境での開発を経験することができます。
自社開発や社内SEの場合は自社内で開発を行うことがほとんどなので、多様な環境を経験できるのはSESのメリットです。
稼働時間は契約に守られている
基本的には契約で決めらた時間を超えて稼働しないよう調整が入るため、過度な残業を強いられる可能性が低いのもメリットです。
ただし、最低限の労働時間が決められていたり、炎上したプロジェクトに参画してしまった場合は契約の時間を超えた稼働が発生することもあるので注意が必要です。
僕も炎上したプロジェクトの火消しに入ったときは大変でした。。逆に平和なプロジェクトに参画すると毎日定時で帰れます!
IT業界の経験がなくても正社員として雇ってもらえる
自社でエンジニアをまかないきれない会社というのは非常に多いのですが、会社の業績を伸ばしていくためにはシステムの力が不可欠なため、SESは常に多くの需要があります。
また、IT業界は慢性的なエンジニア不足の状態になっています。
そのため、SES企業の中には未経験者でも積極的に採用してエンジニアとして育てるというところもあります。
そういったSES企業と巡り合うことができれば、IT未経験の中途採用でもエンジニアとして働くことができるようになります。
僕自身、28歳のときにプログラミング経験ゼロでSES企業に採用してもらえました!
大企業の案件や、大規模プロジェクトに参画できる
SESは、求人倍率の非常に高い大企業や自治体のシステム開発に参画できるチャンスがあります。
大企業の優秀なビジネスマンと一緒に綺麗なオフィスで仕事をする、というのもSESでは珍しいことではありません。
また、そういった客先で頑張りを認めてもらえれば、強いコネクションを持つことができる可能性もあります。
SESのデメリット
SESのメリットを確認しましたが、逆にどういったデメリットがあるのかも確認しておきましょう。
SESのデメリットはこちらの記事にも詳しく書いていますので、より詳しく把握したい方は目を通してみてください。
→客先常駐(SES)を続けると損なのか?やめとけと言われてしまう理由
給料の水準が低い
日本のSES企業の多くが2次請けや3次請けで開発案件を受注します。
クライアントから直接システム開発を受注する場合とくらべると、どうしても報酬が少なくなってしまうため、会社としては薄利になってしまいます。
会社の利益が少なければ社員への還元も少なくなるため、必然的に給料の水準は低いことが多くなります。
帰属意識を感じられない
SESは勤務時間のほとんどを客先で過ごします。SES企業に所属していながら、自社に顔を出すのは年に数回だけということもあります。
そのため、どうしてもSES企業に所属しているという感覚を持てないということが起こります。
自分の会社のために頑張ろうというモチベーションがなかなか湧かないということも多く、長く仕事を続けていく上では大きなデメリットになります。
プロジェクトの一部分にしか関われない
SESは請負とは違い、要件定義のみだったり運用保守のみだったりと、プロジェクトの部分的な工程にだけ参画するケースが多くあります。
そのため、他の人が作ったプログラムを保守することになったり、自分の作ったシステムのリリースを見届けることができなかったりします。
自分が関わったシステムの活躍する姿を見ることができないのは寂しいものがあります。。
偽装請負は他人事ではない
偽装請負は違法行為だということをお伝えしましたが、暗黙の了解で偽装請負が行われているケースは一定数存在します。
エンジニアからすれば指示を受ける相手が違うだけのため、あまり問題視しないこともあるかもしれませんが、知らないうちに違法行為の当事者になっていたなんてことがないように注意が必要です。
定期的に作業現場が変わる
メリットの部分でも全く同じ項目がありますが、定期的に現場が変わるのはデメリットにもなりかねません。
参画してから半年ほどしてやっと慣れてきたところで次の現場へ移動する、というのは珍しくありません。
一か所で腰を据えて働きたいと考える人にとっては大きなストレスになってしまいます。
スキルが身につかない可能性がある
様々な環境で働くことが出来るのはメリットでしたが、現場によってはスキルを必要としない(=スキルが身につかない)仕事を任される可能性もあります。
仕事を通してスキルを身に付けることが出来なければ、エンジニアとしての経験値をためることができません。
昇給やキャリアアップを目指すには仕事以外の時間を使ってスキルを身に付けていくことが必要になります。
もしスキルの身につかない現場に配属されてしまった場合は、他の現場に移動できないか検討することをおすすめします!
転職を検討したほうがいいSES企業の特徴
どんな仕事にもメリット・デメリットは存在します。
デメリットをメリットが上回るのであれば良いですが、もしデメリットの方が大きいのであれば転職を検討すべきでしょう。
特に以下のようなSES企業はデメリットが大きく、早めに転職を検討することで、自分の将来をより良いものにできるはずです。
給与・ボーナスが低い
ITエンジニアは専門職ということもあり、同じ年代や経験年数の平均より年収が高い傾向にあります。
自分の年代や勤続年数の平均年収と比べて、給与の水準が同じか低い場合は転職を検討した方がいいかもしれません。
SES企業の年収は上昇率が低いため、長く続けたからといって将来的に大きく変わるという期待はできません。
福利厚生や社内イベントの費用負担が大きい
従業員の待遇が悪い場合も転職を検討べきかもしれません。
福利厚生の内容が悪かったり社内イベントの費用が会社から出ないような場合、会社の利益を従業員に対して還元できない可能性があります。
SES企業の利益は従業員の数や契約単価に左右されるため、会社の業績を伸ばすには従業員数を増やすか高単価な案件を請ける必要があります。
エンジニアの頑張りが業績アップに直結しにくいため、自分の会社には将来性があるのか、一度考えてみるといいでしょう。
また、社内作業をしている間の時間がきちんと給与に反映されているかどうかも一つの基準にできます。
偽装請負が常態化してる
もし客先での作業内容を自社の上長ではなく客先の担当者から受けている場合、それは偽装請負となり違法行為となってしまいます。
正常なSES企業であれば、偽装請負が起こらないよう対策を立てているはずですが、もし対策が出来ていないのであれば、会社の体制を疑わなければいけません。
望んだスキルが身につかない
現場での作業を通してスキルを身に付けられないのであれば、まずは現場を移動できないか交渉すべきですが、交渉に応じてもらえないのであれば転職するしかありません。
スキルアップを目指していなければ別ですが、エンジニアとして仕事を続けていくのであれば、スキルや経験を身につけるのは必須だと考える必要があります。
将来の自分を困らせないためにも、成長できる環境に身を置くことは重要です。
SES企業から転職するなら
もしSES企業からの転職を考え始めたのであれば、早めに行動を起こすべきです。
行動を起こすと言っても、まずは自分の理想に合う会社があるかを調べてみることから始めましょう。
求人というのは日々入れ替わっていくものなので、せっかく理想的な会社から求人が出ていても、掲載期間が終了してしまえばチャンスに気づくことすらできません。
また、数多くのチャンスと出会うためには転職エージェントがおすすめです。
転職エージェントにしか出ない求人が数多くあり、希望すればエージェントからの転職サポートも受けることができます。
SESからの転職に最適な転職エージェントはこちらの記事に詳しくまとめていますので、ぜひ参考にしてください。
→【厳選】ITエンジニアにおすすめの転職エージェント!SESから社内SEや自社開発への転職を実現!
では、また。