ITエンジニアの働き方として「客先常駐(SES)は辞めとけ」と言われるのをよく聞きます。僕は客先常駐の仕事を5年間続けていましたが、社内SEに転職してから「SESはやめとけ」と言われることがあるという事実を知りました。
受託開発や自社開発とは働き方に違いがあり、悪いところが注目されてしまいやすいのです。
→【SESとは?】ITエンジニアの働き方|受託開発や自社開発などとの違いを詳しく解説
そこで今回は「やめとけ」と言われる理由を検証して、客先常駐を続けるのは本当に良くないのか、本当にやめておいたほうがいいのかを考察します。
自社の作業は勤務時間外にやる
客先常駐(SES)だった頃は不思議と疑問に思わなかったことですが、自社への作業報告や自社での業務は勤務時間とは別(定時後や休日)に時間を取って行う必要があります。また僕の場合は、勤務時間外に作業しているにも関わらず、その時間は残業や休日出勤とはみなされていませんでした。
会社によって多少扱いの違いはあるかもしれませんが、普段の勤務場所が客先である以上、自社の作業が普段の勤務時間外に追いやられてしまうのは仕方ないと思うしかないのかもしれません。
僕は週間作業報告、月間作業報告、社内研修、社内イベントの準備などなど全て業務時間外にやってました。SESになる前もSESを辞めた後も、そういう会社は他に経験がありません。
現場での頑張りが還元されづらい
客先に出てしまうと一緒に仕事をするのは現場の人たちとなるので、自社の上司は自分の普段働く様子を見ることができません。
そのため上司からの評価は、人づてで聞いた情報と本人のアピール次第になってしまいます。
運よく直属の上司と同じ現場に配属されていれば、ある程度しっかりと評価してもらえるかもしれません。
ですが必ず同じ現場になるという保証はありませんし、できるだけ上司と同じ現場になるような仕組みが作られているのかと言えば、そうではないことが多いです。
僕は5年間の中で8つのプロジェクトを経験しましたが、その中で直属の上司と一緒に仕事をしたプロジェクトは2つで、合わせて半年ちょっとの期間しかありませんでした。
ここで注意したいのが「現場の人には評価してもらえてるから大丈夫」と思ってはいけないということです。特に以下の点はほとんどの人にとって大きな問題点になるはずです。
昇給・賞与が期待できない
当然、同じ会社で長く仕事を続けていれば少しずつでも給料は上がっていくもので、それは客先常駐(SES)の会社であっても同じです。
ですが客先常駐(SES)の場合、給与の上がり方が極端に緩やかなことが多い点が問題になります。
客先でどんなに頑張って実績をあげたとしても、それはあくまで客先での評価でしかありません。自社にしてみれば重要なのは単価(作業1カ月あたりに客先から支払われる対価)が上がるかどうかであって、単に客先での評価が高いからといって自社にとってみれば直接的なメリットではないのです。
要するにいくら仕事を頑張ったとしても評価アップが給与アップに直結しないということになります。
賞与も同じように、いくら客先で評価してもらえたとしても毎回同じくらいの内容になりやすく、増減はどちらかと言うと自分の頑張りではなく会社の業績によって決まることが多くなります。
客先に当たり外れがある
どんな客先のどんなプロジェクトに配属されるかは運次第な部分があり、必ずしも本人の希望に沿った仕事ができるとは限りません。
またプロジェクトによって環境や必要なスキルは全く違うため、自分の思い描いたキャリアを積めない可能性もあります。
ステップアップできないことがある
普通であれば一つの業務がある程度できるようになれば次の業務を覚えていく、といったように少しずつステップアップしながら仕事の幅を広げていくものですが、客先常駐(SES)ではそれが難しい場合があります。
例えば客先から求められている業務(スキル)がテストの実施であれば、1年でも2年でもテスターとしての業務を続けることになります。本人が開発や設計に挑戦したいと思っていても、客先が望んでいない業務に就くことはできません。
僕はその点では運よく要件定義、設計、開発、保守と幅広く経験できましたが、同期のなかには半年近くも開発とは縁のない業務を担当していました。また先輩のなかには、やはり数年間テスターとしての業務を続けているという人もいました。
スキルに見合わない業務を担当する可能性がある
これは僕自身の体験談で、上に書いたことと繋がるところでもありますが、自社や客先の都合によってスキルと見合わない業務を担当していたことがあります。
入社してちょうど半年が経ったときのことですが、客先の新規プロジェクトで要件定義の人員が足りないとのことで、僕がその新規プロジェクトに参画することになりました。
当時の僕は業界未経験の中途入社で、やっと簡単な開発やテストができるようになった頃だったのですが、人員の割り振りがうまくいかなかったことでシワ寄せを受けたような形での参画でした。
今では良い経験だったと思えるようになりましたが、素人同然だった僕がそのプロジェクトでどれだけ苦労したかは言うまでもありません。。
もしどうしても業務に就いていけなければ、客先に謝ってプロジェクトを変えてもらうか、別の客先に移るしかありません。
客先常駐(SES)はやめておくべきなのか
個人的にはエンジニアとしての経験を積むことができたので、客先常駐(SES)を完全に否定することはないと思っています。
SESを必要としている企業がたくさんあるのは事実で、SESとしての働き方にやりがいを感じている人もたくさんいるはずです。
28歳で全くの未経験だった僕がエンジニアになれたのは、それでも採用してくれた会社があったからです。
僕のようにエンジニアになりたいけど採用してくれる会社がなかなか見つからない、という場合でもSESならスタートラインに立てるかもしれません。
ですが、ある程度の経験(僕の場合で言うと要件定義から保守まで)を一通り積むことができたら、もっと良い環境を目指すことができるようになるのも事実です。きちんと転職活動をすれば給与にしても待遇にしても確実に良くなると言い切れます。
もし客先常駐(SES)の現状に満足できていなければ、試しに転職サイトや転職エージェントなどの求人を覗いてみると、自分の持ってるスキルにどのくらいの価値があるのかを確認することができるのでオススメです。
僕が理想的な環境を見つけた方法と具体的な流れは下記の記事にあるので、こちらも参考にしてもらえると嬉しいです。
→客先常駐(SES)のITエンジニアが会社を辞めて理想的な働き方を実現する方法と手順
では、また。